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格闘技論R65 猪木は本当に強かったのか?
先号の「ブロディにレスリングを教えた男!」の中で、ボブ・ループが猪木をストレッチしてしまった、というくだりを読んで、「猪木は実は弱いのか?」という詰問を案の定受けた。
ストレッチとは業界用語で、締め技、関節技で相手を降伏寸前まで痛めつけ、「どうだ、俺の方が強いだろう」という無言のアピールのこと。
こう書けば、猪木はボブ・ループより弱かったと言っているようなものである。
そこで、格闘技雑誌「ゴンカク」で「猪木は本当に強かったのか?」という、今回と同タイトルの特集を組んでいた。
これは長年のファンからすれば、教団の信者がウチの教祖は本当に偉いのかどうかと論じるようなもの。
禁断の議論である。
一昔前なら間違いなく編集所は放火されただろう。
レスリング的見地から見れば、猪木の試合を観てハッキリ言って強くは見えない。
レスリング全米王者で、現文部科学副大臣の松浪健四郎氏は、「まあ、一からレスリングを勉強しなさいと言いたいですね」と辛口裁定。
五輪金メダリストのわが師・高田裕司先生には、プロレスを観ていると、「プロレスなんか観るな!猪木が強いわけねえだろう」と一刀両断された。
ゴンカクでは、総合格闘技のマスター的存在である高坂剛が猪木とペールワンのセメントマッチを検証し、「ノゲイラのような強さの質」と結論付けた。
ペールワン戦とは選んだ材料が悪い。
検証するなら「ドイツの墓堀人」ローラン・ボック戦である。
結果的に猪木はボックの前に手も足も出なかった。
しかし、猪木の強さは「腕を折るか折られるか」「どっちが片輪になるか」という、究極の戦い「アルティメット」さえも超えた闘いで発揮される強さである。
シンの腕を折る、ビガロの眼球をえぐるなど、普通の人間はできない。
誰が現役のボクシング世界ヘビー級王者と真剣勝負できようか。
いくらシナリオがあったとしても、いつ壊れるかわからない当時極真カラテ最強の「熊殺し」ウイリーと大観衆の前で誰が試合できようか。
猪木の強さは「胆力」である。
これはアスリートがいくら練習を積んでも得られるものではない強さである。
(フリードリッヒ)
